2022年1月、ソニーストア銀座で行われている「HT-A9/HT-A7000特別視聴会」に行ってきたので報告するよ。
もちろんアトモスとかは5.1.2ch以上のリアルサラウンドが好きだけど、サウンドバーをもっと勉強しないといけないと思った、あとやっぱり映画音響サイトをやってる人間として、HT-A9の音は気になるじゃん!
ぼくみたいにどのメーカーにも遠慮のいらない人間の感想って、HT-A9に関しては特にレビューがまだ少ないんだよね。
今回の2機種は22万、15.4万と逆立ちしても買えない高級機なので、庶民のホームシアターを研究してるぼくには専門外と言えばそうなんだけど…検討している人の参考になればと思うので本音でいくよ。
目次
HT-A9/HT-A7000はソニーストア銀座で試聴できる
ソニーストア銀座のシアタールームでHT-A9(22万円)とHT-A7000(15.4万円)の聴き比べ視聴ができるという企画。
ソニーストア銀座のホームページから予約できる。予約制で1人の持ち時間は30分。
いちばん早い11時30分の回を予約した。
普段から「ぼくの映画館」でドルビーアトモス音響を検証するといえばこれだよ↓
伝説のアトモス音響と言われる、レディプレイヤー1のカーチェイスシーンをメインに、HT-A9、HT-A7000を比較レビューしてみるよ。
自宅のメインシステム5.1.2chリアルドルビーアトモスのサラウンドでポイントを予習しておこう
ソニー製品の前に、「ぼくの映画館」のメインシステム5.1.2chを使って、「レディプレイヤー1」のアトモス音響をチェックするポイントを事前に整理しておこう。
レースシーンはBlu-rayのチャプター2だ。
⭐レーススタート直前にデロリアンの横にアルテミスのバイクが並ぶシーンで、バイクのエンジンを空ぶかしする。この音でそのシステムの低音のポテンシャルが判断できる。
⭐スタートの信号弾?花火みたいなのが空高く打ち上げられるシーン。ここは大きめにトップスピーカーが鳴るシーンだ。高さをチェック。
⭐アルテミスのバイクの移動感や、後方から迫る車両の定位をチェック、画面外の車両の動きまで包囲感があるか?広さをチェック。
⭐コングが吠えて、空らから飛び降りて襲ってくるシーン、リアルアトモスだとすこしのげぞるぐらい上からくる。この迫力をチェック。ティラノサウルスが真上で吠えるのはとてもわかりやすい演出、これが真上から聞こえないと高さ表現は要調整。
⭐コングが後方を右から左にジャンプしながら移動するシーン。低音のリアリティーをチェック。因みにサラウンドスピーカーなしや、サブウーファーなしのモデルだとここは上手く再現されない。
⭐アルテミスのバイクがコングに投げ捨てられて後方でショートして壊れるシーン。ちゃんと後方で壊れる音がするかチェック。
⭐そして「アリースター誕生」からチャプター10のライヴシーンで音楽再生のポテンシャルをチェックした。
ピアノ伴奏の低音の響き、ボーカルの綺麗さ、観客の拍手歓声のリアリティの3点をチェック。
一通りチェックを終えて、まず5.1.2chはあたりまえだけどバランス良く映画音響が再現されていて満足度は高い。
特にアルテミスのバイクがテールをスライドさせて走り抜けるシーンの定位が凄く、正確に音と映像がシンクロしてたのが好印象。
これにどこまで肉薄できるかを見ていきたい。
HT-A9のサラウンドレビュー
HT-A9はオプションのサブウーファー増設もできる。そうすると25万だ。
まぁ製品としては4.0chで完結してる。かなりスピーカーは大きくて低音もしっかり出そうだからサブウーファーなしの状態のほうに興味があったのでサブウーファーは今回鳴らさないセッティングでお願いした。
このあとのA7000もそうなんだけど、ソニーストアではこちらから、「サブウーファーなしでお願いします」と申し出ないとオプションのサブウーファーを鳴らすセッティングで視聴することになる。
まぁいちばん派手な音響を体験させたいという意図があるのだろう。気持ちはわかる。
TH-A9はぼくとしては、スピーカー数や構成を問わない、ドルビーアトモス再生ということであれば、リアルサラウンドの範疇でいいと思う。
ぼくの個人的定義は4.0ch以上がリアルサラウンドだからw
じつはぼくは、2021年から全く新しいタイプのサラウンドシステムを開発中(2022年夏発表予定)なんだけど、これが4.0chベースなのよ。
ついにソニーが誇る、最大12個のファントムスピーカーが作り出す360度の空間音響を体験する時がきたのだ。
良いところは設定が簡単でわかりやすそうなところ。
お店のスタッフがオートセッティングをやってくれたんだけど、今日はシアタールームではなく、展示フロアでの視聴ということだった。
ぼくとしては周囲の音楽や、隣のブースの爆音の中でマイク測定しているのが気が気ではなかったが、まぁしょうがない…
きっとそんなの関係ないほどにHT-A9は凄いのだ!と自分に言い聞かせた。
肝心の音は、
サラウンドの種類としては後方も音圧のあるフォーカスの合った5.1chという感じ。
たまたま設定がそうなのかもしれないけど、(音場補正をかけていたけど、常に大きな音が響くフロア内で測定してるから、精度は不安だった…)後方からも分厚い低音が響くのは凄い。
後方から車両が接近してくる表現などは、重さのある鋼鉄の塊が感じられる。
気になったポイントはアトモス特有の上方向の空間の広がりがあんまり感じられないところ。
あと強すぎる音圧でスポイルされるのか、音が走る感じというか移動感はあまり強く感じられなかった。
それでも水平方向は全方位からしっかりとした音の塊が飛んでくるので映画館っぽい。SF映画やアクション映画は多くの人が大迫力と感じる音響になってるよ。
コングの体重がうちのシステムだとせいぜい1トンぐらいに感じるところ、HT-A9は10トン以上あるように感じるほど芯のある重い音。
因みにサブウーファーの必要は感じない。もし検討してる人がいるなら、サブウーファーレスで購入でいいと思う。
一般家庭なら低音は十分だ。
ぼくだったら、オートセッティングよりやや低音を落として聴くと思う。
あと人物のセリフはどうか?
ダイアローグとか、リップシンクといわれるやつだね。
かなり激しいシーンでもセンタースピーカーないのに、わりとセリフが分離して聞こえる。
これはいいことだなと思った。もしセリフが聞き取りにくいという心配をしてるならダイジョブ。
セリフが籠るとかもかんじない。わりとクリアー。
登場人物との口の動きとの連動はなんともいえない。そこまではチェックしきれなかった。
Bluetoothの遅延はないよ。ぼくが普段からさんざん聞き込んでる作品でチェックしたからズレてたらすぐわかる。大丈夫。
音楽はどうか?アリー・スター誕生のライブシーンを再生してもらった。
もちろん音が悪いということはないんだけど、
ボーカルが引っ込んでいる感じがある。
映画のセリフは分離して良かったんだけどね…
これは設定でどうにかなるのか?このあたりは購入のレビューだったらもっといじってからみんなに伝えられるのだけど、わからない。
ただ、センタースピーカーがないからという感じでもない。通常4.0CHシステムで音楽を聴いてもステレオファントムでボーカルは綺麗に聞こえる。
とにかくライブ音楽シーンはやや残念なイメージだった。
ぼくはこのシーンのピアノ伴奏の低音が好きなんだけど、ちょっとその質感がいまいち。サブウーファーとのクロスオーバーを重ね過ぎたときのようなメリハリのない音に感じた。※この時もサブウーファーレスで視聴した
映画音響がなかなかいいので期待しすぎたせいなのか…
実機に触れてみると、スピーカーがけっこう大きい、Bluetoothでワイヤレスといっても電源は必要だし、これを4個並べるのは普通にリアルスピーカーを置く5.1chとなんら変わらない難易度かな。
因みに、ホントかウソかわからないけど4本のスピーカー配置は高さとかめちゃくちゃでいいらしい。
デザインはモダンでおしゃれ。
リビングなんかにも置き場があるならスマートな見栄えになりそうだ。
22万円という価格だけど…ぼくみたいな庶民には買えない。サブウーファー付けたら25万円だし。
HT-A7000のサラウンドレビュー
HT-A7000はフロントのみの7.1.2ch。
ソニーストアでは希望すればHT-A7000にサラウンドスピーカー(リア)ペアで4万円。を増設して聞かせてくれるとのことだけど、恐らくHT-A7000を購入したい層はサウンドバー単体のレビューが知りたいだろう。
ぼくとしても1本のサウンドバーで完結する最高級機の音をききたい。どこまで映画音響を表現できるのかなぁ。
今回はHT-A9の陰でやや印象が薄くなってしまっているが、HT-7000も楽しみだった。
まず製品写真に一緒に映っていることの多い、箱型のサブウーファーは別売だということに驚いたよ(サブウーファー込みで約20万円)これは誤解されるポイント。
バー内部にサブウーファーが搭載されていて、さらに低音強化したい人は別売のサブウーファーをつけれるというものだから注意。
7.1.2の7というのも不思議で、フロント、センターに加え、サラウンド、サラウンドバックを鳴らすスピーカーも全て一本のサウンドバー内部に含まれているようだ。
さらに上方向にイネーブルドスピーカーが埋め込まれている。
つまりソニーを信じるならばこの棒に11個の独立チャンネルのスピーカーが詰まっているのか…凄すぎる。
価格は15.4万円。
いきなり結論をいうと、
ぼくはHT-7000のほうに好印象をもった。
イネーブルドとはいえ、ちゃんと上から降り注ぐ音を感じる。
音場は特別広がりがあるとは言えないが、大型テレビのスケールのふた回りぐらいのサイズには広がるから特に不満もない。
HT-A9よりバランスはよく感じた。
ただし、予想通り後方のモノの存在感は薄い、コングが後方を飛び回るシーンはほとんど印象に残らなかった。
後方が弱いのはサウンドバーの宿命なのでそこはしょうがないけど、今日の視聴してるのが壁に囲まれた部屋ではないので、後ろも左右も広く抜けているのも影響していてかわいそうではある。
でもそれを補うかのようにアクリルの板に反射したイネーブルドの効果がなかなか良くて感心してしまった。
トップスピーカーを普段使っていると反射させるイネーブルドなんてどうなの…と思ってしまうが、HT-7000の音を聞いて考えを改めた。設計しだいなのかなと。
これは後方サラウンドの不足を補って余りある。
ライヴ音楽の再生は、観客の歓声もリアルで、ボーカルはしっかり前に出て、ピアノ伴奏の低音の質感も上質だ。
HT-A9/HT-A7000特別視聴会の感想
どちらのモデルも大音量、低音の迫力で押してくるセッティングが印象的だった。
HT-A9はスピーカー単体の性能はかなりのものだと感じた。今回はオートセッティングがうるさいフロアで適切でなかった可能性もある。
ここでバランスが…と判断してしまうのはもったいない。自宅に戻ってちゃんと調整すれば、必ず満足いく音響作れると思うのよ。
もともと、誰でも簡単設置で簡単にいい音を目指した商品だから矛盾するんだけど、HT-A9を買ってもしいまいちと感じたら、ダメと烙印を押さないで、好みの音に調整をしてみると理想の映画音響になるはずなんだよね。
このあたりが少しもどかしい製品だ。
だから1週間とか使ってみて慣れてきたら、モード変えたり、リアスピーカーの位置が近すぎたらなるべく離してみるとか工夫してみるといい。
HT-A9の調整機能がどんなに優れていても元の配置はやはり重要だから。
ぼくの好みの問題だと申し訳ないんだけど、今日の視聴も含めて、メーカー製品は常に低音過多なところが自宅で現実的に使うには少し気になった。
映画のような長時間視聴では神経がこわばるというか、リラックスできない音響で疲れてしまう人もいる。
今回は、音響に興味ない人と一緒に行ったんだけど、TH-A9の感想を求めたら「なんか音が強すぎて疲れる」の一言だった。
これ笑えない話で、サラウンドシステムもってるけど、「テレビスピーカーでいいやっ」てなる場合が意外とある。
これはドラマ作品だからテレビのスピーカーで十分…と自分に言い訳するのだけど、なんとなく経験上迫力は増すけど人物のセリフが聞き取りにくいんだよねと思ってしまった経験のある人いると思う。
映画サラウンドの低音はかなりの印象操作ができるから、適切に使うと音が良く感じる。しかし過多になると臨場感やモノの移動感、セリフの分離が落ちる傾向がある。
またフロントヘビーになりがちなサウンドバーは穏やかなシーンの柔らかな包まれ感という表現は難しい。
この2機はコンセプトが違うけど、価格帯はほぼ同じ。
音楽再生は考慮せず、純粋に映画を楽しむ装置として考えたときにどちらも映画館のような音で楽しめる。
とにかくYouTubeやメディアで絶賛されていることの多いHT-A9。
「リアルサラウンドを聴いたことがない人が大袈裟にレビューしてるだけでしょ?」と思いたくなる気持ちもわかるけど、
結論としてはどちらの機種もほぼリアルサラウンドと変わらない。
本来、ホームシアターをちゃんと評価するなら騒音のない静かな空間と壁が4方にある部屋でやるべきだから、今回の視聴はこの2機種はかわいそうだったといえる。
どちらも本来の実力を発揮できてないと思うのが残念。
それでもポテンシャルの高さはわかった。
ぼくのメインシステムより聞こえかたが素敵だなぁと思うシーンもそれぞれあった。
HT-A9はサブウーファーなしでも分厚い低音が優れていて音にパワーがある。
HT-7000は音を天井に反射させることで、単純にアトモス以上の広がりを感じるシーンがけっこうあった。ぼくのシステムより飛び散ったコインが上からも降ってくるような感覚が楽しかったし、アリーのライヴでは観客の歓声はぼくのシステムより臨場感が自然に感じた。
ホームシアター、オーディオが趣味の人にはどちらもオススメではない!
もちろん!同じ20万円で大型AVアンプでシステム組んでも、適当なセッティングや調整だったら映画の楽しさでSONYのこの2機種に敵わないよ。
ぼくがどちらかをリビングで使うならTH-7000が欲しい(^^)/(注:買えないけど)