「浅草キッド」2021年製作/ドルビーアトモス/123分/日本
ビートたけしが自身の師匠である芸人・深見千三郎と過ごした青春をつづった自伝小説「浅草キッド」を映画化したNETFLIXオリジナル作品。(2021年12月9日から配信)
ホームシアター趣味の方は是非見てほしい。
最近5.1.2chリアルアトモスを実現した人も!
そんな時にうってつけなのがまさかの…「浅草キッド」なのだ。
そもそも「浅草キッド」の音声がドルビーアトモスというのは意外だった。
日本映画はドルビーアトモス対応作品が少ない気がする。
だから、サラウンド音響好きのぼくとしてもそこは期待せず、純粋に物語作品としてビートたけしの誕生秘話を軽い気持ちで観たのよ。
ところが、実際に鑑賞してみると音楽、街の喧騒、登場人物たちの位置関係など今までの日本映画には…いやハリウッド映画にも珍しいアトモスの使い方に驚いた。
まぁ、サラウンド音響に誰も興味ないのは慣れている。
「浅草キッド」を、アトモス音響作品として評価している記事、コメント等もほとんどみたことないw
↓は数少ない音響情報
ぼくの独断と偏見で日本映画史上、最高峰(と思う)のアトモス作品の理由を語ろう
ドルビーアトモス音響で甦る、昭和40年の浅草の風景
昭和の歌謡曲の記憶って、レコード、テープ、CDのステレオの音だったじゃん。
アトモスなんてなかった。
それがアトモスで立体音響になって素敵なのよ。
昭和歌謡のノスタルジックな音響と立体音響アトモスの組み合わせって日本人が体験したことないサウンド。
つい先日映画館でアトモス上映していた「トップガン マーベリック」(良かった、泣いた!男の子は見た方がいい)のようにわかりやすく派手な音響でリスナーを驚かせようとする方向のサラウンドじゃない。
操作しているオブジェクトの数は攻殻機動隊などに比べたらそんなに多くない、せいぜい数人の登場人物や鳩、自転車の位置関係がわかる程度。
でもその移動感がシームレスに表現されていて描写が丁寧なんだよね
映画全編がフランス座のような小さな劇場でお芝居を見ているようなほっこりする音響。
ぼくはストリップを実際に見たことがないのでわからんのだけど、ストリップのシーンの演奏の低音の響きが適度で気持ちいい。
最近替えたフロントスピーカーのJBLのA130の特性とよくマッチしていて浅草×JBL×アトモスが楽しい(^^♪
「浅草キッド」アトモス音響オススメシーン紹介
まず、スタート直後00:01:45からのシーン。
北野たけしがステージ(テレビ番組)に登場する場面で、両開きのドアが開き前に進むと同時に、観客の喝采が広がる。
この音響表現が素晴らしい。
アトモス音響なのかシャワーのようにドーム型に歓声が降り注ぐのよ
ぼくは罵声を浴びた経験しかないから、わからんけど、鬼のように調整したアトモスシステムをもっているなら、このシーンを再生すれば芸能人気分を味わえるぞ!
「浅草キッド」では数少ないトップスピーカーから積極的に音が鳴るシーン…
ではない!
まさかの、トップスピーカー鳴らない。
最近痛感するのは、天井なしでもかなり満足のアトモスがたのしめるという真実。
ボヘミアンラプソディで、最後にクイーンのメンバーがスタジアムに入っていくシーンの熱気と歓声の表現も素晴らしいけど、それを彷彿とさせるものがある。
スケール感では負けるんだけど、箱のサイズにぴったりの音響が素晴らしいのだ。
00:10:12のところ、昭和40年の浅草だ。
左手から自転車に乗ったおじさんが接近してきて、声をかけられる描写がとてもリアル、初めて観た時は、誰もいない部屋の左後方を見てしまったほどだ。
誰かが近づいてくる感じがちゃんとある。
この明瞭さはオブジェクトを動かしているアトモスならではのものだと思う。
同時に動くオブジェクトの数は少なくてもひとつひとつ丁寧に作られた音響が心地よい。
カウンターで00:21:25 から音楽がカッコよく始まるストリップのシーン。
ここはボリューム上げ気味で盛り上がろう(^^♪
このシーンのサウンドは本作ではピカいち。個人的には、アリースター誕生やラ・ラ・ランドなどの大御所音楽系映画にも負けない仕上がりと思う。
※きわどい映像はないので家族で見てもギリギリ…
ネタバレになるから詳しくは言えない。
登場人物が通りすぎたり、背後でしゃべっていたりの聞こえ方がゆるーくアトモスしていてなんとも自然。
そしてエンドクレジットまで、心地よいサウンドで楽しめた。
NETFLIXなら洋画、邦画、アニメの垣根を越えてドルビーアトモスを楽しめる
という訳で、「浅草キッド」のアトモスはどーだ!凄いだろ!みたいな感じのアトモスではない。
日常の雑踏がアトモスで表現されるというのは、同じNetflixだと「ローマ」にも近いかもしれん。
実は最近映画だけでなく、Netflixのドキュメンタリー作品もアトモス対応が増えている。料理番組なんかもアトモスだったりして楽しい。
それらを見ていると映画とはまた違う音響の魅力に気がつく。
ドルビーアトモス誕生から約10年。
高さや、迫力をアピールする時代から自然な心地よい没入感にシフトしていく時期かもしれん。
アトモスはアナログな音との相性が意外と良いのかも…と「浅草キッド」を見て感心しましたよ。